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2026.11.02 / COLUMN
インドにGCC(Global Capability Center)を立ち上げると決めたあと、多くの企業が最初にぶつかるのが「エンジニアをどう採用すればいいのか」という壁です。インドには優秀なエンジニアが数多くいる一方で、Google・Microsoft・Amazonといった巨大テック企業のGCCが同じ都市・同じ人材プールで採用を競っています。一般的な「インド人材の採用」とは異なる難しさが、GCCのエンジニア採用には存在します。
本記事では、GCC戦略を検討・実行中の経営者・人事責任者の方に向けて、GCCのエンジニア採用が普通の採用と何が違うのか、チームをどう設計し、どのチャネルで採用し、どうやって定着させるのかを、実務目線で解説します。
なお、GCCそのものの定義や設立形態、都市別の給与比較についてはそれぞれ以下の記事もご確認ください。
💡 本記事のポイント
- ・GCCのエンジニア採用は、競合の質(グローバルテック企業)、口説くべき対象(正社員としての魅力)、スピード(7〜10日で決着する市場)という3つの点で、一般的なインド人材採用と難易度が異なる
- ・採用活動の前に、組織の設計に応じて優先して採用すべきロールを決める(立ち上げ期はテックリード/シニアエンジニアから)
- ・複数チャネルを組み合わせた母集団形成、実力を見極める技術面接、入社後の定着施策までを一貫して設計することが鍵
一般的なオフショア開発の採用であれば、競合するのは同業のIT企業かもしれません。しかしGCCのエンジニア採用では、GoogleやMicrosoft、Amazonといった世界的テック企業の現地GCCが、同じベンガルールやハイデラバードの人材プールから同じスキルセットのエンジニアを奪い合っています。「知名度のある大手と同じ土俵で戦う」という前提を持ったうえで採用活動に臨む必要があります。
GCCで採用するエンジニアは、業務委託先の社員ではなく自社の正社員です。候補者側も、単なる受託開発の仕事ではなく「このGCCで何を作り、どう成長できるのか」を厳しく見極めます。給与条件だけでなく、技術的な挑戦や意思決定への関与度、キャリアパスを言語化して伝えられるかどうかが、採用競争力を左右します。
インドのトップクラスの人材は、市場に出てからわずか7〜10日程度でオファーを承諾するとも言われています(詳細はインド人エンジニア採用のすべてを参照)。日本企業の意思決定スピードのままでは、社内検討をしている間に候補者が他社のオファーを受けてしまうケースが少なくありません。
採用活動を始める前に、まずどのような人物から採用するか、組織の設計に応じた優先順位を決めておく必要があります。人数が少ないうちから闇雲に採用を進めると、技術の意思決定者が不在のまま人数だけが増え、品質やマネジメントが破綻しがちです。
少人数からのGCC立ち上げについては、マイクロGCC戦略の記事もあわせてご参照ください。
▼ フェーズ別・優先して採用すべきロール(例)
| フェーズ(目安人数) | 優先して採用すべきロール | 理由 |
|---|---|---|
| 立ち上げ期(1〜5名) | テックリード/シニアエンジニア1〜2名 | 技術的な意思決定と採用面接の目利きを担う中核人材を先に確保する |
| 拡大初期(5〜15名) | ミドル〜シニアエンジニア中心 | テックリードの下で実務を回せる層を厚くする段階 |
| 拡大期(15〜30名) | エンジニアリングマネージャー+ジュニア層(育成体制付き) | マネジメント専任化が必要になる境目であると同時に、メンター役が揃い始めジュニアを受け入れ・育成できる体制が整う段階 |
| 成熟期(30名〜) | 専門職(AI/ML、セキュリティ等)+新卒・未経験採用の本格化 | 評価制度・育成体制が整い、専門特化人材や大量のジュニア採用を計画的に進められる段階 |
ロール別の給与水準や都市ごとの相場は、都市比較記事やコスト記事で詳しく解説していますが、ここで押さえるべきは金額ではなく「順番」です。テックリード不在のまま採用を先行させると、技術面接の質が担保できず、後から立て直すコストの方が高くつく可能性があります。また、優秀なエンジニアを採用しても、うまくチームとして機能できず、離職に繋がるおそれもあります。
本社側から人をアサインする場合は上記の限りでないケースもあるため、組織体制を設計した上で、採用が必要な人物の優先順位や人物像を検討することが重要です。
大手テックGCCと同じ土俵で戦うためには、求人媒体への掲載を待つだけの受け身の採用では埋まりません。加えて、日系企業のGCCは現地での知名度がゼロからのスタートであることも多く、好条件を提示しても候補者の目に留まらないという壁があります。エンジニアブログでの技術発信や、既存メンバーによるテックコミュニティ・カンファレンスへの関与、社員のSNS発信などを通じて、「このGCCでどんな技術に触れられるのか」を地道に可視化していくことも、中長期的な採用力につながる方法の一つです。
採用チャネルをどう組み合わせるかは、自社の知名度やスピード要件によって変わります。特に立ち上げ初期でGCCとしての採用実績・知名度がない段階では、リファラルや直接アプローチだけでは母集団が不足しがちで、外部パートナーの活用が現実的な選択肢になります。

インドの採用市場では、候補者が実力を大きく見せてアピールすることが一般的です。これは悪意ある詐称というより、競争の激しい市場で生き抜くための標準的な振る舞いとされています。だからこそ、面接側は自己申告を鵜呑みにせず、実力を客観的に見極める選考フローが必要です。
GCCのエンジニア面接では、以下を選考に組み込むことが有効です。
オンラインでの選考における不正対策や、候補者が求める「アピール」への向き合い方については、インド人エンジニア採用に関するこちらの記事でより詳しく解説しています。

GCCのエンジニア採用は、採用して終わりではありません。GCCにおいてAI・クラウドなど需要が過熱しているスキルを持つ人材の離職率は約18〜25%とされ、採用しても短期間で離職してしまうリスクが常につきまといます。(GCC全体の平均離職率は12.6%程度ですが、需要の高い専門スキル層ではこれを大きく上回ります。)
定着率を高めるために有効なのは、以下のような取り組みです。
これらは採用時点での「口説き文句」ではなく、入社後も一貫して実行される必要があります。採用と定着は連続した取り組みとして設計することが、GCCのエンジニアチームを持続的に成長させる鍵になります。
GCCのエンジニア採用は、一般的なインド人材採用と比べて、競合の質(グローバルテック企業)、口説くべき対象(正社員としての魅力)、スピード(7〜10日で決着する市場)という3つの点で難易度が異なります。採用の優先順位を明確にした組織設計、複数チャネルを組み合わせた母集団形成、実力を見極める技術面接、そして入社後の定着施策までを一貫して設計することが、GCCの立ち上げと成長を左右します。
INDIGITALは、インド現地でのエンジニア採用支援(タレントアクイジション支援)と、EORを活用したGCC立ち上げ支援の両面から、日系企業のインドGCC構築をサポートしています。エンジニア採用の進め方について具体的に相談したい方は、お気軽にお問い合わせください。
・Salary Increase, Attrition & Hiring Trends in GCCs 2025-26 – Zinnov
・India GCCs: Retaining the Right Talent or Just Enough? – Zinnov