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INTERVIEW 04:スタートアップ企業のインド拠点立ち上げのリアルと開発拠点の最新の潮流

2025.12.09 / COLUMN

事業内容     :

IT/Web系のエンジニアに特化したエンジニアと企業のスカウト型リクルーティングサービスとエンジニア組織支援SaaS「Findy Team+」の提供

企業ホームページ :

今回は、2023年12月から弊社INDIGITALの「トライアル駐在サービス」をご利用いただいたファインディ株式会社の執行役員CFO河島傑(かわしますぐる)様へのインタビュー第2弾として、インド事業立ち上げのリアルとGCC(グローバル・ケイパビリティ・センター)開発拠点の最新の潮流について伺いました。

河島:ファインディの河島と申します。私は現在バンガロールにちょうど2年近く住んでいます。ファインディでは海外事業の責任者として、グローバル拠点の立ち上げを行っています。

ファインディは、8〜9年前に設立されたエンジニアプラットフォームをつくっている会社です,。元々はソフトウェアエンジニアの採用を支援しており、エンジニア採用において、スキル感が分からない企業と、正しく評価されより良い機会を見つけたいエンジニアをマッチングするプラットフォームとして立ち上がりました。

我々の特徴は、単なるマッチングではなく、エンジニアが使うGitHubというツールを解析し、プログラミング言語のスキルをスコア化している点です。これにより、スコアが高い人=積極的にエンジニアのスキルが高いと企業側にも分かり、エンジニアにとっても自分のスキルをアピールしやすい仕組みとなっています。現在、15万人以上のエンジニアの方に利用いただいています。

河島:私のファーストキャリアは監査法人で公認会計士でした。個人的にグローバル市場でキャリアを磨きたいという思いが強くなり、2016年にリクルートに転職し、2017年にサンフランシスコに駐在しました。アメリカでは3年間、1,000億円を超えるM&A案件や、HR系の企業買収などにM&Aチームとして関与しました。

日本に戻ってきてからは、リクルートで下駄を履かせてもらった経験がある分、今度は海外進出をゼロからできたら面白いのではないかと考えました。まさに今後海外進出もやっていきたいというファインディにご縁をいただき、2021年4月に入社しました。

会計バックグラウンドから、事業を伸ばすことが本質であり、事業のフロントで戦っていくことに楽しみを見出すようになり、結果的にコーポレート側から事業側に寄り、「誰よりも営業する人」になって今インドで活動しています。

河島:アメリカとは違いすぎて比較にならないと思っています。バンガロールはインドの中でも住みやすい場所だと理解しつつも、生活のセットアップやトラブルに結構苦労します。自分だけではなく、例えば妻が体調を壊すなど、アメリカの時にはトラブルにならなかった生活基盤の部分でトラブルが起きがちです。一方で、全く違うカルチャーを体験できるという観点で、シンプルにインドの生活を楽しんでいます。

河島:我々はソフトエンジニアに特化したサービスを展開していますが、グローバルに進出していくにあたり、どの事業を、どういう顧客に売っていくのかが重要でした。特に、エンジニアの生産性を可視化するSaaS「Findy Team+」は、アメリカでは非常に盛り上がっていますが、まだアジアには浸透しきっていないと感じていました。

進出戦略を検討した際、日系企業が一定程度ソフトウェアエンジニアの文脈で進出しており、英語でオペレーションができ、グローバルマーケットと繋がっている場所が必要でした。顧客アセットを活かすという観点からも、アジアで最初に取り組むべき場所として、正直インド一択だったというのが背景にあります。

河島:失敗というべきかは難しいですが、思っていたスピードで立ち上がっていかないという点はあります。日本のSaaSプロダクトを英語にしただけでは、国によってソフトエンジニアのプロセスの課題やプロダクトの使われ方が異なるため、そのまま持っていっても売れないという課題に直面しました,。初期ヒアリングでは、エンジニア組織の課題の違いは多くないと感じていましたが、実際に踏み込んでみると、プロセスが整っていない、品質への向き合い方が違うなどの特性の違いがありました,。

また、採用においても苦労しました。新規事業系の担当者を採用するのは日本でも大変ですが、インドではゼロからの立ち上げで、オファーを出した候補者の給与情報が詐称されていたなど、想像しないトラブルも発生しました。これにより数ヶ月採用できずに、最初のモメンタムを作りきれなかったのは一つの反省点です。

営業活動においては、意思決定者層に話を聞いてもらうために、コミュニティ活動を早期から実施したことが功を奏しています。ソフトエンジニアのリーダーシップ層を集めたラウンドテーブル「KAIZEN X(カイゼン エックス)」を毎月実施しています。これは、ハードウェア業界で当たり前だった「改善」というフィロソフィーをソフトウェアに持ち込んでいくプレイヤーとしてインドで位置づけられた結果、シンプルに営業に効いています。

コミュニティ運営については、自分でひたすらLinkedInでリーチすることに加えて、信頼できるベンダーを活用し、ラウンドテーブルの運用を手伝ってもらっています。プロフェッショナルネットワークの活用が重要でした。

河島:現在、フルタイムは5名で、他にアドバイザーやフリーランスがいます。採用では、試用期間などを経て、スタートアップ的な動きができ、体育会系チックにPDCAサイクルを回せる人を採用しています。みんな真面目にやってくれており、私のいないところでどうやったら事業を伸ばせるか話し合っているらしく、良いメンバーを採用できたと感じています。

河島:開発拠点という観点では、AIによる開発が重要な潮目になってきています。従来の「安いインドでヘッドカウントを求め、大量にエンジニアを雇用する」やり方はワークしなくなっており、経営層がインドに求める期待感は、レベルの高いIT人材、AI人材に変わってきています。

GCCにおいても、戦略的開発拠点として成り得るかに関心が集まっています。AIが台頭しても、全ての開発が自動化できるわけではないため、AIをメンバーとして含めたサステナブルな開発組織を作る必要があります。

日本でトップオブトップの人材を採用しきる難しさや、組織のグローバル化の必要性から、インドにおけるGCCの位置づけは、世界的に今後も増えていくと予想されます。この潮流があるため、日系企業もインドへの投資は避けて通れず、興味を持つ企業が増えてきています。

河島:まず、日本の採用のやり方や求める技術の軸をぶらさないことが大切です。インドでは候補者が多いため、選考に選ばれようとする意欲が高く、レジュメに誇張して話している可能性が高いです。そのため、レジュメを盲目的に信じるのではなく、コーディングテストや設計意図のヒアリングなど、複数の方法で実力を見極める必要があります。

そして、本社側が採用を丸投げせず、自社にとってどういう人がいいのかを肌感として持つために、現地で誰かがしっかりと採用活動にコミットしなければ、事故るだろうと感じています。

リモートワークについては、すでにオペレーションが整っていてトラックしやすいならワークしますが、文化やチームを一緒に作っていくフェーズでは、文化や言語が違う人たちであるため、最初は対面の方がやりやすいと考えています。

長期的な定着については、最初から盲目的に信じすぎると、辞められた時のダメージが大きいです。開発プロセスができてきたら、早く属人化から外して仕組みを作っていくこと、そして2〜3年で回り続ける組織をどれだけ作れるかが求められると思っています。

モチベーション維持のためには、採用時に何を求めているのかをしっかりヒアリングし、それが変わっていないかを追いかけ続けるという期待値との調整が重要です。また、インドの方はステータスや世間体を気にする傾向があるため、役職や海外(日本)への出張機会なども影響します。ただし、ご褒美はすぐに与えるのではなく、インセンティブとしてワークするよう設計すべきです。

河島:シンプルに、気になるならインドに来た方がいいです。目で見ないと分からないことが多いですし、来たら日本人とだけ話すのではなく、インドの方と喋るべきです。LinkedInを使えば簡単に返信も来るので、目的を持って自分でアクセスし、一次情報を集めてみると、インドの解像度が上がります。簡単なビザで数ヶ月滞在できるので、「ワークフロムインディア」しちゃえばいいと思っています。

我々ファインディは、AI活用時代に開発生産性を高めていく支援をしています。すでに開発拠点がある企業も、これから作る企業も、進出方法や失敗事例、成功事例を共有できますので、お気軽にご連絡いただければと思います。かないし、会社としてももっと海外に人を出すしかない。業界によっていろいろな意見はあるとは思いますが、多少何かを失ってでも海外人材を受け入れていく覚悟が必要だと思います。

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