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2026.02.27 / COLUMN
インド人の採用面接後、多くの担当者が「手応えのなさ」や「違和感」を口にします。
溢れんばかりの自信に圧倒され実力が見えない、和やかに終わったはずが翌日には他社へ辞退される。こうした失敗の多くは個人のスキルの問題ではなく、面接官の「期待値」とインド市場の「現実」のズレに起因します。
本記事では、インド人との面接の現場で日本企業が直面しやすい壁と、候補者から「選ばれる」ための具体的な面接手法や評価基準の作り方をお話します。
💡 本記事のポイント
インド人材の面接を成功させるには、企業は自社が「選ばれる立場」であることを自覚し、候補者のアピールを鵜呑みにせず、明確な基準と手法を用いて客観的な事実に基づく評価を行う必要があります。
・事実に基づく面接:面接官は、インド人候補者のアピールを鵜呑みにせず、「STARメソッド」や「リフレーズ」を用いて過去の具体的な行動事実とスキルの解像度を確認する必要があります。
・評価基準の統一:企業は、面接官による評価のブレを防ぐため、具体的な評価基準を設定し、組織で共有する必要があります。
・アピール戦略と定着の見極め:企業は、インド人材が重視する「柔軟な働き方」や「家族の事情」を尊重してアピールすると同時に、過去の退職理由の合理性を深掘りし、長期的な就業意欲を見極める必要があります
優秀なインド人材を確保しようと意気揚々と面接に臨んだものの、手応えとは裏腹に辞退されてしまった。採用してみたら思うように活躍しない。こうした失敗の背景には、日本企業が無意識に陥りやすい「3つの壁」が存在します。
日本では誰もが知る大企業であっても、一歩インドへ出れば全くの無名企業であることも珍しくありません。候補者はブランド力ではなく、自分のキャリア(市場価値)にどう直結するかをシビアに見ています。 「日本からわざわざ面接に来てあげた」という上から目線ではなく、自社が提供できる価値を再定義し、候補者から選ばれる立場であるという自覚を持つことが、インド人材採用を成功させるための第一歩です。
日本では謙虚さが美徳とされますが、過酷な競争社会にいるインド人は、自分のスキルを200%の熱量でアピールします。初めてインド人の面接をした日本人の面接官は、この勢いに圧倒されてしまいがちですが、アピールの勢いだけで判断せず、丁寧な対話による深掘りによってスキルの客観的な事実を一つずつ確認し、中身を冷静に判断することが求められます。
インドの採用市場のスピード感は、日本の数倍速いと言っても過言ではありません。「社内でじっくり検討して来週に返事を…」と考えている間に、他社への入社を決めてしまうことも多々あります。また、選考の遅さは単なるプロセスの問題ではなく「自分への関心が低い」「企業の意思決定能力が低い」と見なされる可能性がある点にも注意が必要です。
▼スピード感を持ってインド人を採用するステップはこちらの記事をご覧ください:
インド人材採用の完全ガイド:市場動向・採用ルート・面接・交渉・労務まで
面接をしたインド人に対して「自分勝手だ」「理屈っぽい」と感じてしまう場合、それは個人の性格ではなく、インド特有の文化的背景に起因していることが多々あります。ここでは、これからインド人との面接に臨む方のために、ぜひ知っておいていただきたい文化的な特徴についてご紹介します。

ヒンディー語で「ジュガード」とは、限られたリソースの中で創意工夫を凝らし、解決策を見出す精神を指します。 決められた手順を遵守することよりも、最終的に目的を達成することに圧倒的なプライオリティを置きます。
面接で「マニュアルを無視して解決した」というエピソードを聞いた際、日本的な感覚ではルールを守れない人に見えることもあるかもしれませんが、不確実な状況を打破する「目的へのコミットメント」として評価すべき資質かもしれません。
多言語・多宗教社会で育ったインド人にとって、言葉による議論は相互理解のための不可欠なツールです。面接中、候補者が面接官に対して「そのやり方よりも、こうした方が効率的ではないか?」と意見してくることがあります。日本人の感覚では、反抗や無礼とも考えうるシチュエーションですが、彼らにとってはより良い結論を出すための「貢献」の意思表示です。
インド人の凄まじい上昇志向の根底には、個人的な野心だけでなく、家族や親戚、コミュニティ全体を豊かにしたいという強い責任感があります。 キャリアを「自分一人のもの」ではなく「家族のプロジェクト」として捉えているため、日本人と比較しても昇進や給与に対するこだわりは全体的に強い傾向があります。
▼ インド人の性格や仕事観に関してはこちらの記事もご覧ください:
インド人の性格と仕事観を徹底解剖!文化の違いを『組織の力』に変えるインド人マネジメントの極意
インド人の自信に満ちたアピールの中から、入社後に活躍する「本物の実力」をどう見極めれば良いのか、不安に思われる方も多いかと思います。そんな時は、以下の具体的な手法を用いてみてください。
インド人候補者との面接では、「すべて経験があります」「できます」という言葉が頻繁に飛び出します。それを鵜呑みにするのではなく、STARメソッドを活用して深掘りを行います。
これにより、本当に実務を理解して手を動かしていたのか(単に上司や部下がやっていただけではないか)が見えてきます。この時、認識のズレを防ぐために「つまり、あなたは〇〇という課題に対し、××の手法で解決したということですか?」とあえて確認し、さらに論理的な補足を促すことで解像度をより高めることができます。
技術力だけでなく、多文化・多言語社会のインド人材ならではの交渉力や説得力といったソフトスキルも、上記のSTARメソッドを用いて評価します。 日本人と仕事をする可能性がある場合には、「背景の異なるチームメンバーや、厳しいクライアントをどう説得し、巻き込みましたか?」という質問を投げかけ、日本組織においても周囲と協調しつつ、物事を前に進める力があるかを評価することも有効です。

インド人材の採用において、日本企業が最も懸念するのが「ジョブホッパーではないか(すぐに辞めないか)」という点ではないでしょうか。インドでは「転職=成長(給与・役職のアップ)の近道」と捉える文化が根強く、面接でキャリアプランを尋ねても「キャリア形成のため」「将来はマネージャーになりたい」といった表面的な回答しか返ってこないことがよくあります。そんな時には、以下のようなアプローチで見極めを行います。
ジョブホッピングが一般的な社会とはいえ、数ヶ月単位で転職を繰り返している場合は注意が必要です。ただし、インドでは家族・親戚の急病や企業の業績悪化など、やむを得ない事情による離職も多いため、「過去の転職の際、具体的にどのような理由・背景で決断しましたか?」と丁寧にヒアリングし、その理由に一貫性や合理性があるかを確認します。
「マネージャーになりたい」「キャリア形成のため」という決まり文句に対しては、「その役職に就くために、これから当社でどのような経験やスキルを積む必要があると考えていますか?」「転職して具体的に得たいものは何ですか?」と問います。そうすることで、中長期的な成長の道筋を自身で描けているか、そしてそれが自社の提供できる環境・業務と一致しているかをすり合わせることができます。
面接官の主観や「なんとなくの印象」を排除し、組織として統一された基準で評価するための仕組みを導入しておくことをおすすめします。
評価基準については、「コミュニケーション能力が高い」といった曖昧な表現は避け、より具体的な状態を定義しておくことが重要です。
例えば、コミュニケーション能力に関しては、以下のような5段階の定義を定めておくことで、誰が面接官を務めても、一定の基準で候補者の評価をすることができます。
| レベル5 | 複雑な概念を簡潔に説明し、代替案のメリット・デメリットを定量的に示せる。周囲をリードして合意形成ができる。 |
| レベル4 | 論理的な根拠に基づき、自身の意見を明確に伝えられる。反対意見に対しても建設的な議論が可能。 |
| レベル3 | 日常的な業務遂行に支障がないレベル。指示内容を正しく理解し、不明点を確認できる。 |
| レベル2 | 基礎的な用語は理解しているが、複雑な状況説明に窮する。一貫性が欠ける場面がある。 |
| レベル1 | 質問の意図を理解できず、議論が成立しない。論理的な飛躍が多い。 |
評価基準については、すでに人事評価制度などに用いている項目を活用することもできるかと思いますが、インド人材が日本企業で活躍するために特に重要な「自律性」「問題解決力」「説明責任」についてもスコアリングしておくことをおすすめします。これにより、営業職でも事務職でも、一貫した活躍の可能性を測ることが可能になります。
近年、インド人従業員の価値観には劇的な変化が生じており、従来のような給与だけではない部分を重視され始める傾向にあります。そのため、企業は以下のポイントを強くアピール・確認する必要があります。
インド人が今、給与以上に重視しているのが「柔軟性(Flexibility)」です。2025年には、インド人従業員の半数以上が「柔軟な働き方ができないなら仕事を辞める」と回答し、その関心度は世界平均を大きく上回っていることが報じられました(※1)。
ここで注意すべきは、彼らが求めているのは日本企業がアピールしがちな「残業の少なさ」ではないという点です。
このような背景から、面接では自社の働き方がいかに自律的で柔軟であるかを、具体的に提示する必要があります。
一方で、必ずしも入社直後から100%の柔軟性を与える必要はありません。試用期間中は可能な限り出社をさせ、職場の文化を知ってもらい、上司や同僚との信頼関係を構築してもらうための期間をあえて設けることも大切です。
インドの人材の多くは、自身の市場価値向上に極めて貪欲です。特にAIなどの先端技術への学習意欲は高く、多くのインド人が学習機会がなければ離職を検討するほどです。そのため、「この会社でどんな最新スキルが身につくか」を明確に語ることは、最高のアピールになります。また、上司との良好な関係も重視されるため、面接官は「自分と一緒に働くことで、君はこれだけ成長できる」と力強く伝える姿勢が不可欠です。
日本では面接で家族のことを聞くのはタブー視されがちですが、インド人採用においては、親の承認や家族の引越し可否が内定受諾に関わるケースも多いため、あらかじめ家族のことを質問することも一般的です。
「このキャリアステップについて、ご家族はどう仰っていますか?」「転勤に対し、ご家族が不安に感じていることはありますか?」など、面接の段階から家族を含めた入社後の生活を共に考える姿勢は、リスク回避であると同時に、候補者への深いリスペクトとして受け取られます。
インド人採用における面接は、単なるスキルの確認テストではありません。お互いの文化や期待値のズレを埋め、一緒に働くイメージを具体化していく「すり合わせ」の場です。
相手の自信に満ちたアピールから本質を見抜くこと。そして、キャリアプランや家族の事情まで含めて、本音で話し合うこと。この積み重ねが、最終的な「内定承諾」と、入社後のスムーズな活躍に直結します。
文化や価値観の違いを扱いづらさではなく前提条件として捉え、まずは面接の進め方を少しだけアップデートすることから始めてみてください。
株式会社INDIGITALでは、インド人材の採用からマネジメントまで、現場に即した伴走支援を行っています。「自社の面接フローを見直したい」「評価基準を作りたい」など、具体的なお悩みがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。