トピックス
2022.05.28 / PARTNERS
(文責:福成千穂/株式会社INDIGITAL)
これまでも、長時間不規則な勤務の中で体力・気力・専門性が要求される医療従事者に対する勤務環境の改善や、国民皆保険による患者の病院志向など、医療崩壊を食い止める様々な取り組みが行われておりましたが、今回の新型コロナウィルス感染拡大により、医師・看護師不足などの課題も顕在化し、少子高齢化の影響を最も受ける一業態である医療の改善は、もはや待ったなしの段階に到達したと言えるでしょう。
一方、コロナ禍で勤務体系が激変したのは在宅勤務ではないでしょうか。元々、パソコンと通信環境が整備されていれば在宅勤務は可能でしたが、業務状況が見えにくい・コミュニケーションが取りにくい等と、管理者目線から在宅勤務が抑止されていました。しかし、緊急事態宣言やまん延防止で在宅勤務が推奨されると、顧客先とのオンライン会議や電子承認なども非常識でなくなったのです。
このような状況でぜひご紹介したいのが、デジタル聴診器を手がけるインドのMuse Diagnostics Private Limited(以降、Muse社)です。同社のデジタル聴診器による在宅診療など、医療現場の改善に一役買うことが期待されます。この度、獣医でもある創業者のArvind Badrinarayananさんにお話を伺いました。
会社名:Muse Diagnostics Private Limited
本社:インド(ベンガルール)
設立:2016年
従業員:19名
URL:https://www.museinc.in/
獣医のArvind氏は、犬や猫の心臓音からデジタル心臓音を抽出し、診断アルゴリズムにかけようとしました。そこに、音声の録音、フォーマット・転送に知見がある、音響エンジニア兼ミュージシャンのSumukh氏がやってきて、医療現場に役立つ診断機器が作れないか、議論しました。Vishnu氏は、GEヘルスケアで診断用心臓病学やユーザーインターフェースなど様々な部門でリードしてきた人物で、ソフトウェア、ビッグデータ、医療分析に関する知識を生かしてミューズに入社した3人目のパートナーです。そうして2016年にMuse社が誕生しました。同社は弊社INDIGILABのバンガロールオフィスからほど近い、バンガロール市内中心地にオフィスを構えます。Muse社はUSBで接続可能なデジタル聴診器(TAAL)と測定した音波を表示するアプリ(SUPP)を提供することにより、在宅診療を支援しています。日本の企業とも在宅診療や高齢者向けのヘルスケアで協業を始めているとのことです。
今後、データを蓄積・分析するクラウドサービスの提供、APIの提供による協業機会の拡大、データ分析のコンサルティング、保険契約におけるリスクアセスメントなどの事業展開も視野に入れています。
TAAL | SUPP | Analytics | |
1. Function /機能 | 聴診器 | アプリケーション | サービス |
2. Service /サービス | 喉、肺、胃、腸、胎児の心拍を測定 | Shazam(Appleの音楽認識アプリ)を活用して、7種の音波を表示 | 収集データをモデルに取り込み改善していくことにより症状を特定 |
3. Status /提供状況 | Now on Sale | Now on Sale & Planned enhancements | Planned |
4. Price /価格 | $150 | 1患者につき$5/月 | $0.2/回 |
Arvindさんから、日本に期待する具体的な構想を3点お伺いしました。
1点目:まずは病院や大学などで使ってもらいたいと考えています。インドでは毎年10万人以上の医学生が卒業していることを踏まえれば、伝統的な聴診器を複数の学生で使い回すのは非常に効率が悪いです。日本ではTAALを1人1個配布しても十分投資対効果が見込めるのではないかと考えます。
2点目:病院の先生にも使って頂きたいです。病源特定の確率を向上させるためにも、利用者数とデータ数を増やしたいです(現時点で病源特定率は3割)。日本でも在宅医療のニーズがあると思いますので、そこでも活用してもらいたいです。最終的には通院の難しい患者向け(BtoC)に拡大したいと考えます。
3点目:日本の音響機器のリーディングカンパニーと協業して、スマートウォッチやスマートスピーカーなどと連携させたりを、収集する音質の精度をたかめることで診断率向上を図りたいです。
なお、日系企業との連携にあたって、医療関係のISO13485を2022年7月に取得予定です。INDIGITALが同社との協業を技術論点から法務・税務論点に至るまでご支援致しますので、まずはお気軽にお問い合わせ下さい。