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INTERVIEW 02:現地法人を設立せずにインド駐在を「スピーディに実現できるスキームがいい」

2024.05.08 / COLUMN

事業内容     :

IT/Web系のエンジニアに特化したエンジニアと企業のスカウト型リクルーティングサービスとエンジニア組織支援SaaS「Findy Team+」の提供

企業ホームページ :

今回は、2023年12月から弊社INDIGITALの「トライアル駐在サービス」をご利用いただいたファインディ株式会社の執行役員CFO河島傑(かわしますぐる)様に、インド進出の背景や、チームの立ち上げ状況や今後の展望、そして、実際に弊社のサービスをご利用いただいた感想などを伺いました。

河島:ファインディはエンジニアプラットフォームをつくっている会社です。これからの時代、企業が発展していくためにはどんな事業においてもエンジニアが必要となりますが、経営者とエンジニアとの間にはまだまだ大きな溝があると感じています。特に日本企業は、エンジニアの力を最大限に生かしきれていないと感じます。当社は「挑戦するエンジニアのプラットフォームをつくる。」というビジョンにおいて、企業がいかにその溝を埋めて、エンジニアが輝ける場所をつくれるか。そして、そのプラットフォームを日本初・日本発のプロダクトとして、世界で通用するプロダクトをつくりたいと考えています。

また、何より日本を豊かにしたい、子どもが大きくなったときも日本が豊かであり続けてほしい、そんな当社代表の山田が思い描く未来を実現するために「つくる人がもっとかがやけば、世界はきっと豊かになる。」という経営理念を掲げ、事業を行っています。

この、エンジニアにフォーカスをしたビジョンにおいて、現在ファインディでは5つのサービスを提供しています。1つ目が、エンジニアのスキルを可視化して採用につなげるIT/Webエンジニアの転職サービス「Findy」。2つ目が、ハイスキルなフリーランスエンジニア紹介サービス「Findy Freelance」、3つ目が、グローバルエンジニア採用プラットフォーム「Findy Global」。4つ目が、採用だけではなくエンジニア組織の生産性を高めてエンジニアが開発できるスピードや開発総量を早く・大きくしていく「Findy Team+」、そして、5つ目が新しいサービスとして、エンジニアの開発ツールに特化したレビューサイト「Findy Tools」をつくっています。

「Findy Tools」は、自分がつかっている開発ツールを、なぜこれを使っているのか、使ってみてどうだったか等の開発ツールレビューをエンジニアが自分で投稿できる仕組みになっています。オープンソースコミュニティなどとも言われたりしますが、エンジニアの世界では、自分の経験したこと、有益な情報を、世の中に積極的に還元していきたい、社会に貢献したい、と考えている人が多いんですね。エンジニアのスキルを可視化する「Findy」も、オープンソースであるGitHubのコードを解析しています。エンジニアは自分がつくったもの、自分が書いたコードが世の中のためになるのであればぜひ見てほしい、そういった思想がある中で、そのコードがどれだけ使われたかという影響力・貢献度を解析することで、プログラミング言語のスキルを可視化しているわけです。

ファインディはこの「エンジニアプラットフォーム」を通じてどんどんエンジニアと企業をつなげていって、そのプロセスの中でサービスラインをさらに増やしていくことを考えています。エムスリーが医療従事者向けポータルサイトを通じて30万人超の医者に対してサービスラインナップを増やしていったのと同じように、ファインディは世界の優秀なエンジニアに対してサービスを提供していきます。例えば、日本には120万人のエンジニアがいると言われますが、その中でも意思決定者やシニアレベルのトップ層30万人に対して、エンジニアのマッチングや開発スキル、開発組織の生産性を可視化していくことで、このプラットフォームを企業がトレーニングに活用しよう、自社の開発デューデリジェンスに活用しよう、受託系の開発会社が自社の開発力を数値化して営業に活用しよう、という形で広がってくることを期待しています。

河島:われわれの原点であるGitHubのスコアを解析してエンジニアのスキルを可視化するサービスは、2024年4月現在、累計19万人のエンジニアに使っていただいているのですが、2年ほど前に英語版をつくってアジア20カ国で試験的に提供をしてみたんですね。英語で「あなたのスキルを可視化します。そして、日本でどれぐらいの年収が稼げるかを予測します。」というメッセージとともにリリースをすると2ヶ月で約7,000人のエンジニアが登録をしてくれて、その約40%がインドからの登録者で、さらに、インド人エンジニアのスコアが相対的に高いことが分かったんです。
ちょうどその頃に、メルカリやPayPayがインドに開発拠点を作ろうとしていたり、楽天はすでにインドに拠点を持っていましたので、これはインドの波が来ているのではないか、インドを軸に置くと面白いのではないかという仮説が立ちました。これがインドに興味を持ったきっかけです。もともとインドのことはよく分かっていませんでしたが、いろいろな人に話を聞くとどうやら伸びているらしい、エンジニアの数も多く、世界中の企業がインドに開発拠点をつくっている。ユニコーン企業も100社以上ある。これはもうちょっと調べてみる価値があるのではないか、という話になり、2023年1月からインドへの出張を開始しました。

※ファインディ株式会社様からご提供

調査をしていく中で、APAC(アジア太平洋地域)や中東、世界への事業展開を見据えたハブとして、ベンガルールを位置付けるという仮説を持てたのがインドに進出することになった背景です。世界で活躍するインド人を味方にすることでFrom India To Globalを日本企業がやっていく。それをわれわれファインディも一緒にやっていく。その思想を実現するためにここインドでビジネス拠点をつくっていきたいと考えています。具体的には、まずインドではエンジニア組織の開発生産性を可視化する「Findy Team+」を販売するところから入っていき、エンジニア組織のトップと関係性を構築していく中で、最終的には採用マッチングプラットフォームへの橋渡しをしていきたいと考えています。

河島:当社代表の山田が前職のレアジョブ時代にブラジル進出を担当していたことがありまして、その当時、彼は執行役員として他の仕事も兼任をしていたため、ブラジルには赴任をしなかったそうなのですが、彼によるとそれが当初うまくいかなかったひとつの原因ではないかと痛感したと言います。やはりトップが現地に行かなければ海外事業は立ち上がらない、だから、もしファインディが海外事業をやるのであれば絶対に役員クラスが行かなければならない、という強い想いがあったんですね。ファインディのプラットフォームをグローバルに展開していくのであれば、われわれファインディ自身が身をもってグローバルに行かなければならない。そう考えたときに、かねてからグローバルをやるために当社に入社をした私がインドに移住することとなりました。

河島:そうですね。苦労をした背景にあるいちばんの肝は、「日本の企業が初めて従業員を海外に送る」ということだったと思っています。前職のリクルート時代にアメリカに駐在に行ったときとは違って、社内には海外駐在規定もなければ、駐在にかかる手当やその相場感、それを比較・検討する情報もない、ビザの取得方法、引越し業者の選定にいたるまで、どうやって従業員を海外に送ればいいか、コーポレート側も含めて知見がないわけです。しかも、国はインド。誰もわからない、何が正しいのかもわからない状況で、リスク評価もできないのでなんか怖い。この何もないところから準備をスタートしたという点でとても苦労しました。

あと、どうやってインド市場に参入するのかという進出スキームの検討も大変でした。大前提として、事業をつくるためにインドに行くのに駐在者が本業以外のコーポレート側(管理業務)に時間を割きすぎることはナンセンスだと思っていまして、なので現地法人をつくるのは極力最終手段にしたかった、というのがあります。インドの場合、駐在員事務所や支店での活動は難しいし、出張ベースだと限界がある。この仮説は実際に引っ越してみて当たっていたんですが、やっぱり「住む」と「出張」はぜんぜん違っていて、インドで参画したインド人メンバーからも「河島さんがコミットしてインドに引っ越してきたことに本気度を感じた」って言われたんですね。出張者っていつでも日本に帰れちゃうんですけど、すぐに帰れない状況にあえて身を置いてコミットすることが大切ですし、“前に進まないときっと見えない景色がある”からこそスピーディに実現できるスキームがいいと思っていました。でも、コーポレート側としては不安でしかない。この間を取るのが、御社が提案をしてくれたスキームだったと思います。現地法人を作らずに前に進めるのなら最高じゃん、と。

河島:現在インド人が2名参画しましたが、まずはインド人4名体制に向けて立ち上げているところです。日本でも従業員が40名から100名ぐらいになるまでは採用責任者をやっていたんですが、インド人の仲間を見つけるのも日本と同じで、正直、最終的に誰がいいかは分からないので、日本とインド両国のエンジニアをよく知っている信頼できるインド人アドバイザーにまずは最初のスクリーニングをしてもらって「この人はたぶん大丈夫」というコメントをもらったり、実際に参画したインド人メンバーにも人事面接をしてもらって、現場のメンバーが一緒に働きたいと感じた候補者に対するコメントも参考にしながら私が最終面接をしています。

ただ、やっぱりもうここの見極めは難しいので、いろいろやってみるしかないと思っています。実際に一緒に働いてみるしかないし、まずは業務委託でも何でもいいから一人でも多くのインド人と働いてみることでしかない。実は、大したリスクがなかったりするので、あとは飛び込めるかどうかだと思っています。事実、一緒に働こうとした候補者のひとりの給与情報に偽りがあったりというトラブルも発生したので、もっと速く、もっと余裕を持って探すべきだったな、という点では反省することも多々ありました。

あと、これまで仲間を探す活動においてひとつ大切なことがわかったのは、インドに駐在してゼロから事業を立ち上げていく中で、いろいろなインド人と向き合って話をしてきましたし、全部自分でやってきたからこそ、どんな人と一緒に働いたらいいのかの解像度が上がってきたように感じています。ここは確認しなきゃいけない、というポイントが少しずつ分かってくるので、人の見極めが少しできるようになってくる。自分がやっているひとつひとつの仕事が、最終的にはすべて繋がっているんだなと思いますね。

ノートパソコンの前に座る男性

低い精度で自動的に生成された説明

河島:基本的には、そんなに違わないと思っています。結局「人による」というのは、アメリカに駐在していた頃からずっと変わっていないですね。真面目に働くひともいれば、そうでない人もいますし、コミットメントが高い人もいれば、そうでない人もいる。思っていたよりも動きが悪い人もいれば、思っていたよりも動きが良い人もいて、人ってそんなもんだよね、という感覚です。

ひとつ感じているのは、インド人って日本人やアジア人に共通する「情の強さ」と、良くも悪くもアメリカナイズされた「ローコンテクストなコミュニケーション」が混ざり合って、それを状況に応じてうまく使いわけている民族なんじゃないかということです。戦略的にどこまで考えてやっているのかは分かりませんが、インド人は(相手に対して自分がした恩を意識させ、将来的に何らかの形でその恩を返してもらうことを期待するという意味で)「Obligation(オブリゲーション:義務・責任)」という言葉をよく使うように感じていて、自分が期待する結果を得るためにうまく駆け引き・交渉ができる民族なんじゃないかと思っています。そういう意味では“欲マネジメント”をうまくやれば、インド人ともうまく付き合えるのではないでしょうか。

あと、これはそもそも育ってきた環境が違うからだと思いますが、多少のインテグリティ(誠実さ)に問題があっても結果さえ出せば褒めてもらえると思っている節があるんですよね。過酷な競争社会の中でずっと生きてきて、日本人よりも家族が貧困である可能性も高いので、お金を稼ぐことに対する意識が日本人よりも高いように感じますね。この「勝てば官軍」みたいな世界がインド人のいろいろなコミュニケーションの中に現れているような気がします。ただ、大原則として、「なぜこの行動をしたんだろう」という思いを巡らせることが、どんな民族の人と話す場合であっても根幹にある気がしているので、その人の背景を理解しようと努力してコミュニケーションするしかない。この点を踏まえた上で、期待値のすり合わせや(結果だけではなく)アプローチ方法を含めた的確な指示をしないと、想像しないところでダメージを食らうんじゃないかと(笑)。口で言うのは簡単ですが、とても難しいですよね。

河島:絶対に伸びると言われているのにその通りになかなか伸びない不思議な国だな、と感じています(笑)。ただ、世界でビジネスをしていく上で俯瞰的にインドを見ると、ファクト(事実)としてインド出身の人がどの国にもいて、GAFAMのようなビッグテックのトップにもインド人がいて、世界で成功しているスタートアップは日本よりもインドが圧倒的に多い。人口比の差以上に多いと思うんですよね。私はまだ魅力を語れるほどインドのことを知らないですが、ただ「それがなぜなのか」を学ぼうと思ったら、たぶん実際にインドに来て、インド人と一緒に仕事をするしかないんじゃないか、と思っています。インドにしかいない超優秀な人がどれぐらい優秀なのかを見てみたい。ユニコーン企業(評価額10億ドル超の非上場スタートアップ)クラスのインド人トップと話してみたいです。

河島:英語でかつグローバルで仕事ができる人材が圧倒的に多い、という一点に尽きると思います。英語の発音が聞き取りにくいという話はありますが、英語の発音はそもそも日本人もひどいので(笑)。ただ、アメリカの企業で働いたことがあるインド人はどんどん増えていて、発音も特に問題ない人が増えてきています。コスト削減についてはたしかに、アメリカやロンドン、シンガポールでチームを作るよりはインドはよっぽど安いので世界から見たらコスト削減にはなりますが、日本から見たらコスト削減にはならないですね。これだけ円安が進んでいる状況もありますし、今更コスト削減でインドを見るのは諦めた方がいいです。やはり、世界の市場にリーチができるかどうかで考えるべきだと思います。

河島:実現できたら面白いなと思っているのは「世界に飛び出すビジネスハブとしてのインド」という立ち位置だと思っていまして、ソフトウェア企業であるわれわれが世界を取るために、インドで拠点をつくり、インドでチームを組成して、そこから世界を狙う。なぜ、私たちがいきなりアメリカを狙わないかというと、資金力もあって最先端を走るアメリカに、竹槍持って攻めていっても勝てないからです。日本人のネットワークって日系にしかないですけど、インド人のネットワークにはインド企業だけではなくちゃんと外資が入っている。アメリカ企業にもインド人がちゃんとポジショニングをしているので。だからこそ、世界で勝ちにいくために、インドに行くことで最終的にはアメリカに近づけるのではないか、という仮説を検証していきたいと考えています。

河島:とても助かっています。海外事業をやるときにひとりで全部できないですし、立ち上げの責任者としてインドに赴任している中で、もちろん法人設立や労務・会計はとても大事ですけど、そこにトップが100%時間を使ってしまうと事業が立ち上がらないので。インドで独立・自走できている企業はいいと思いますが、そうではないほとんどの企業は日本に本社機能がある状況化において、日本とのコミュニケーションは切っても切り離せないですし、現場にいる私も感覚でしか語れない部分が多いですし、日本側にはその感覚さえもない中で、何かを意思決定しなければならない。そんな中で第三者のプロフェッショナルファームがそれに対するリスクを客観的にコメントしてくれたり、業務を代行してくれたりするのは圧倒的に助けられました。改善点は、よくしてもらっているので本当にないです。

ノートパソコンの前に立っている少年

低い精度で自動的に生成された説明

河島:マクロな話をすると外国人の受け入れを頑張るしかない、という話だと思います。国として労働力が足りていないわけですし、日本をよりグローバル化させていくという一点に絞るなら、日本人を外国人に慣れさせるしかない。結局行動できていない人が多いだけで、EORなどのサービスを活用して海外人材を雇ってみるしかないし、会社としてももっと海外に人を出すしかない。業界によっていろいろな意見はあるとは思いますが、多少何かを失ってでも海外人材を受け入れていく覚悟が必要だと思います。

河島:まずはスモールプロジェクトで、本筋のプロダクトロードマップに直接関係しない試せるところで、業務委託でもいいからインド人エンジニア2〜3人と一緒に働いてみるのが良いと思います。もったいないのは、1人目のインド人のパフォーマンスが悪くてそれ以外のインド人全員に悪印象を持って「インド人はNGです」となってしまっているケースがあるんですが、N1の評価に基づいて14億人全員をNGにするのはちょっと、、、、(笑)そういったバイアスは捨てて、日本でも同じだと思いますが、1人目でいきなりうまくはいかない前提でやっていくことが大切ですかね。まずは実際にインドに来てみて、いろいろなインド人と面談して、一緒にご飯を食べ、一緒にチャイを飲む。そうすると、採用の話でも、開発の話でも、エンジニア組織の話でも、結構みんな同じ話で悩んでるんですよね。インド人に対して勝手にどこか違う人だと思い込んでしまっているから怖いだけなので、「結局みんな一緒じゃん」って気づけたら目的達成だと思います。

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