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2022.10.07 / PARTNERS
日本は人口減少に加え、乗用車の維持費の負担を嫌い、乗用車世帯保有率は頭打ちとなっています。また、コロナ禍で外出機会、特に長距離の外出も減少しました。
一方、若年層は保有意欲は低いものの、カーシェアリングを利用する傾向にあります。
これらの動向から、コロナ禍で本格的な外出・観光の需要は戻って来る頃には、さらにカーシェアリングの需要が急増するのではないかと考えられます。しかし、コロナ禍で一旦職を失ったサービス業従事者は、元の職業に戻ってくるでしょうか?おそらく、コロナをきっかけにDXが加速したこの流れは逆戻りすることなく、今後もAIで代替できる業務の自動化が進むことでしょう。
こちらは、世界のAI画像認識市場の成長率を色で示しています。
コンピュータが、デジタル画像や動画の中のモノやヒトを認識し、その意味を理解することで、人間のタスクを自動化するAI画像認識が期待されています。この市場は、これまで北米が牽引していました。そして、セキュリティ及び電子商取引のニーズが高まり、2021年から2026年に向けて、アジア太平洋地域で急速に成長すると予想されています。(*1)
しかも、その適応領域は、自動車、フィンテック、ヘルスケアなど、実に多様で、多くのプレーヤが参入し、今後ますます競争が激化してきています。人間の視覚・音声・言語などの認知(Cognitive)を模した機能をAPIとして提供するアマゾン、グーグル、マイクロソフトをはじめとする多くのプレーヤーが参入して、日々機能を刷新しています。そして、これらのAPIを活用することによって、単純な繰り返し業務を自動化します。そこで、スマートホンとAI画像認識技術を用いて自動車の車両外観欠陥検査を手掛けるInspektlabsに注目しました。
同社は北米に本社、デリーとジャイプールに開発センターを持つスタートアップ企業です。2021年1月、米国に本社をもつScrum Ventures LLC主催のグローバル・オープンイノベーション・プログラム「SmartCityX」に採択され(*2)、「NTT DATA Open Innovation Contest 11」のグランドチャンピオンにも輝いた(*3)企業です。
創業者であるDevesh Trivedi氏は、インド工科大学(IIT)デリー校を卒業し、インド商科大学院(ISB)でMBA取得後に戦略コンサルティング会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。10年超の勤務を経て2019年に同社を創業しました。このたびDevesh Trivedi氏にインタビューする機会を頂きましたので、その内容をもとに同社の技術と日本企業との協業についてご紹介いたします。
【企業概要】
会社名 :Inspektlabs Inc.
事業概要 :コンピュータ・ビジョンのプラットフォーム提供
本社 :米国(ニューカッスル)
設立 :2019年
従業員数 :38名
【従業員内訳】
・開発部門 30名(インド)
・営業部門 3名(インド)、5名(欧州)
・製品
スマホで撮影した車両の静止画像(数枚)や、ビデオ(2分程度)を用いて車両点検の自動化を支援する「AI画像検出プラットフォーム」を提供します。
主なポイントは4つあります。
静止画だけでは見えにくいダメージを、動画を用いてさまざまな角度から見ることで、ダメージ度合いの検出精度が向上します。
画像は前回撮影した差分を検出し、ダメージ箇所・種別・ダメージ率などを定量的に表示できます。交通事故、いたずら、車両運搬時の事故、雹害、飛び石、等が原因で発生した車両のキズ、凹み、及びガラスの損傷をスマホで簡単に検出できます。現在の検査対象である乗用車に加えて、トラック、バス、バイク等の検査にも順次対応する予定です。
ユーザーは、Inspektlabsの提供するアプリを用いて数秒間ほど撮影した画像を、指定のサーバーにアップロードするだけです。数分後にはスマホやパソコンで検査結果を確認できます。不正塗装や走行距離の改ざんなど、ユーザーが偽装した行為を検出することが可能です。
ナンバープレート、車台番号、人間の顔等の、個人を特定する情報を自動的にマスキングできるため、GDPR対応が必須である国や企業はもちろんのこと、そうでない場合でも個人情報保護へのの配慮が可能です。
既存のシステムにInspectlabsの優れた欠陥検出機能を統合する事も可能です。そのため、使い慣れたワークフローを維持しながら、Inspectlabsの最先端技術を取り入れることができます。
3種類の価格があります。
Trial:100検査まで無償。
Pro:検査ごとに課金。検査回数に応じてボリュームディスカウントを適用。
Enterprise:年間または四半期契約。
ユーザの要求に合わせたカスタマイズ、追加機能の開発等も可能です。
(2)販売
インドはデリーとジャイプールに開発体制を敷き、欧州・インドで拡販しています。日本は現在パートナー企業と実証実験中で、詳細は後述します。主なターゲットは、レンタカー、商用車リース、自動車保険、中古車販売、ディーラー、物流など。査定時に活用したり、物流では運搬前に負った傷かどうかを確認することができます。現在は自動車が対象ですが、今後トラック、バスなど他の車両や、車両以外の物にも拡大したい。
現在は、コンテストでの受賞(*3)をきっかけに株式会社NTTデータと協業して、日本市場開拓に取り組んでいます。更に、車両ビジネスに関わる日本企業との協業を積極的に推進しています。
なお、開発面での協業は視野になく、あくまでもInspektlabsのAI技術を活かして、自社サービスに組み込んでもらうことを期待している、とDevesh氏。AI技術に対するプライドと、度重なる個別仕様作り込みによる負の遺産を抱えないためにもクラウドでの展開を勧めます。
また、車両検査は車両保険も合わせて展開していくのがWin-Winのビジネスモデルとなるため、保険会社のパートナーも模索しています。日本で需要の回復が期待される来年のゴールデン・ウイークを目指して、協業に興味を持たれた方がいらっしゃればお気軽に弊社にご連絡ください。
*1 出典:Mordor Intelligence
AI画像認識市場-成長、傾向、COVID-19の影響、および予測(2022年-2027年)
*2 出典:SmartCityX 新たな企業や自治体がプログラムに参画し、スタートアップ18社を早期採択
https://www.smartcity-x.com/post/newpartner_earlyacceptance_201029
*3 出典:NTT DATA Announces The Result Of Open Innovation Contest 11
https://us.nttdata.com/en/news/press-release/2021/february/result-of-open-innovation-contest-11