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2026.09.18 / COLUMN
「インドで人を雇う方法を調べていたら、EOR(雇用代行)、給与計算代行(ペイロール)、派遣、PEO(共同雇用型の人事代行)、業務委託……似たような言葉がたくさん出てきて、結局どれが自社に合うのか分からなくなった」——インド進出を検討される多くの方が直面するお悩みです。
これらは「外部の力を借りて、インドで人に働いてもらう」という点では共通していますが、誰が雇用主になるのか、自社の現地法人が必要かどうか、どこまで任せられるのかが、それぞれまったく異なります。ここを取り違えると、思わぬ税務・労務リスクや、余計なコストにつながりかねません。
この記事では、EORと混同されやすい4つのサービス——給与計算代行・派遣・PEO・業務委託——との違いを整理し、皆さまが「自社にはどれが合うのか」を判断できるようにお手伝いします。EORそのものの仕組みは「EOR完全ガイド」で詳しく解説していますので、本記事は「似たサービスとの違い」に焦点を当てて、お伝えします。
💡 本記事のポイント
- 違いを見分ける最大の軸は「誰が法的な雇用主か」と「自社の現地法人が必要か」の2つ
- EORは、現地法人を作らずに雇用主の役割を丸ごと任せられる点が、他のサービスと決定的に違う
- 「人を雇いたい」のか「業務を任せたい」のか——目的が決まれば、選ぶべきサービスは自ずと絞れる

細かい解説の前に、全体像を先にお見せします。よく比較される5つのサービスを、重要な観点で並べると次のとおりです。
| サービス | 法的な雇用主は誰か | 自社の現地法人 | 主に担う範囲 | こんな場合におすすめ |
|---|---|---|---|---|
| EOR(雇用代行) | EOR事業者 | 不要 | 雇用・給与・労務・法令対応まで丸ごと | 法人を作らず、少人数で早く雇いたい |
| 給与計算代行(ペイロール) | 自社 | 必要 | 給与計算・納付の代行のみ | すでに現地法人があり、給与実務だけ外注したい |
| 派遣(スタッフィング) | 派遣元(スタッフィング会社) | 不要 | 人材の供給と雇用(指揮命令は自社) | 一時的・変動する人員を柔軟に確保したい |
| PEO(共同雇用型の人事代行) | 自社とPEOの共同雇用 | 必要 | HR・給与・労務を分担 | すでに法人があり、労務を手厚く支援してほしい |
| 業務委託(コントラクター) | いない(雇用ではなく委託) | 不要 | 成果・業務を委託 | 独立した専門家に単発・案件単位で依頼したい |
※「派遣」はインドでは「スタッフィング(人材供給)」と呼ばれ、日本の労働者派遣とは根拠となる法律が異なります(詳細は後述)。 現地法人がなくても利用できますが、元請としての責任やPE(恒久的施設)課税のリスクがあります(詳細は後述)。
※PEO:インドには米国のような「共同雇用(co-employment)」を認める法制度がなく、法律上の雇用主は常に一社に特定されます(元請使用者としての二次的な責任は別途生じます)。そのためインドで「PEO」と呼ばれるサービスは、実際には ①現地法人を持たない企業向けのEOR、または ②すでに現地法人を持つ企業向けの給与・人事事務の代行、のいずれかを指すのが一般的です(後述)。
こうして並べると、見分けの軸がはっきりします。ポイントは、①誰が法的な雇用主になるかと、②自社の現地法人が必要かの2つです。中でもEORは、現地法人を作らずに「雇用主の役割そのもの」を任せられる点が、他のサービスとの決定的な違いです。
一方で、「そもそも人を雇うのではなく、業務だけ任せたい」なら業務委託、という選び方もあります。次章から、この5つのサービスの中身と違いを、一つずつ分かりやすく見ていきましょう。

まずは、5つのサービスが「何をしてくれるもの」なのかを、一つずつ平易に押さえましょう。
EOR事業者が、貴社に代わって法律上の雇用主となり、インド人材を雇用する仕組みです。給与の支払い・社会保険・労働法への対応といった雇用主としての手続きを事業者が引き受けるため、貴社は現地法人を作らなくてもインドで人を雇えます。
毎月の給与計算、税金の源泉徴収、社会保険の納付といった「給与まわりの事務」だけを代行するサービスです。雇用主はあくまで貴社自身なので、この形を使うには、貴社がインドに現地法人を持っていることが前提になります。
スタッフィング会社(人材供給会社)が雇用する人材を、貴社の指揮のもとで働かせる形です。雇用主はスタッフィング会社で、貴社は日々の業務を指示します。インドでは労働者供給に関する法律(契約労働法。現在は新しい労働法典に統合)が根拠となり、日本の「労働者派遣」とは制度が異なります。一時的・変動する人員を柔軟に確保したいときに使われます。
米国で発達した仕組みで、PEO事業者と顧客企業が「共同雇用(co-employment)」の形をとり、人事・給与・労務の実務を分担します。雇用主が2社になる点と、顧客企業が現地に自社の法人を持っていることが前提となる点が、EOR(雇用主は事業者1社のみ・現地法人は不要)との大きな違いです。ただしインドには共同雇用を認める法制度がないため、インドで「PEO」と呼ばれるサービスの中身は米国型とは異なります(後述)。
そもそも「雇用」ではなく、独立した個人や事業者に業務を委託する形です。成果物や役務に対して報酬を払うもので、雇用主・被雇用者の関係にはなりません。単発やプロジェクト単位の依頼に向きますが、実態が雇用に近いと「誤分類」と判断されるリスクがあります(後述)。

5つのサービスは、次の3つの観点で見ると、違いがすっきり整理できます。
最も重要なのがこれです。「誰がその人の雇い主として、給与・社会保険・労働法上の責任を負うのか」で、サービスの性格が決まります。
雇用主が誰かによって、労務トラブルや法令違反があったときに「誰が責任を負うか」も変わります。EORは事業者が雇用主として責任を負い、派遣も雇用主は事業者ですが自社にも元請としての責任が残ります。給与計算代行やPEOでは、自社に雇用主としての責任が残ります。
「インドに自社の会社を持っていないと使えないか」も、実務上の大きな分かれ目です。
給与計算代行とPEOは、あくまで「すでに自社で雇っている(=現地法人がある)」ことが前提のサービスです。まだ法人がなく、これから少人数で始めたい段階では、EORや業務委託が現実的な選択肢になります。
「採用 → 雇用 → 給与 → 労務・法令対応」のうち、どこまでを任せられるかも異なります。
この3つの観点——誰が雇用主か/現地法人が要るか/どこまで任せられるか——を自社の状況に当てはめると、候補はかなり絞り込めます。次章からは、EORと各サービスを一対一で比べ、混同しやすいポイントを解きほぐしていきます。
どちらも「給与」に関わるため混同されがちですが、任せられる範囲がまったく違います。
給与計算代行は「給与事務だけ」の代行です。 毎月の給与計算や税金・社会保険の納付を代わりに行ってくれますが、雇用主はあくまで貴社自身です。採用も、雇用契約も、労務トラブルへの対応も、貴社が担います。したがって、この形を使うには貴社がインドに現地法人を持っていることが前提になります。
EORは「雇用そのもの」を代行します。 EOR事業者が法律上の雇用主となり、給与だけでなく雇用契約・社会保険・労働法対応まで丸ごと引き受けます。だからこそ、現地法人がなくてもインドで人を雇えます。
つまり見分け方はシンプルで、「すでに雇っている人の給与事務だけ任せたい」なら給与計算代行、「これから現地法人なしで雇いたい」ならEORです。すでに現地法人があり、経理・給与の実務負担だけを軽くしたい企業には給与計算代行が向きます。
この2つは「事業者が雇用主となり、指揮命令は自社が行う」という点が似ているため、混同されやすい組み合わせです。どちらも自社の現地法人は不要です。では何が違うのでしょうか。
派遣(スタッフィング)は「人手を借りる」イメージです。スタッフィング会社が抱える(または集めた)人材を、必要な期間だけ自社の指揮下で働かせます。人選も事業者主導になりやすく、一時的・季節的・変動する人員を柔軟に確保したいときに向きます。インドでは労働者供給に関する法律(契約労働法。現在は新しい労働法典に統合)が根拠となり、人材供給サービスには原則としてGST(物品サービス税)18%がかかります。
EORは「自社が選んだ人を、自社の一員として雇う」イメージです。採用したい特定の人材を、EOR事業者が雇用主として雇い入れ、貴社の正社員に近い形で長期的に働いてもらえます。給与・待遇も貴社の方針に沿って設計できます。
使い分けの目安は、「一時的な人手・数の柔軟性がほしい」なら派遣(スタッフィング)、「特定の人を自社チームの一員として長く迎えたい」ならEORです。
なお、派遣(スタッフィング)は現地法人がなくても利用できます。これは「インドの人材会社が法律上の雇用主となり、貴社はあくまでサービスの発注者にとどまる」という前提で成り立つ仕組みです。インドの労働法上、「事業場」はインド国内の場所を指し、「元請雇用主(principal employer)」もそれを前提に定義されるため、インドに拠点を持たない企業はそもそも元請雇用主に該当しません。逆に、現地法人がある場合は元請雇用主としての責任を負います。
ただし、禁止されていないだけで、制度として明確に認められているわけではありません。 政府のガイドラインもこの類型には触れておらず、法の空白にあたります。また、日本の派遣の感覚で貴社が現地スタッフを直接監督・指揮し、懲戒権まで行使していると評価されると、契約は形式にすぎないと判断され、貴社自身が雇用主としての責任を負う可能性があります。運用としては、業務委託・アウトソーシングに近い距離感が求められます。
税務面では、貴社の関与の度合いによってはPE(恒久的施設)と認定されるリスクも指摘されます。ただし日印租税条約には米国・英国条約のような「サービスPE」条項がなく、よく引用される「90日基準」は日本企業には適用されません。実際の判断は、インド国内の場所が貴社の処分の下にあるか、そこで中核事業が行われているか等の事実認定によります。
※PE(恒久的施設)課税リスクについてはこちらの記事もご覧ください。
こうした点を踏まえると、インドに拠点をまったく持たない場合は、実務上はEORのほうが整理しやすいケースが多いです。
海外の人材サービスでは、EORとPEOはとりわけ混同されやすく、事業者によっては同じ意味で使われることさえあります。しかし、両者には決定的な違いがあります。
PEO(Professional Employer Organization)は「共同雇用(co-employment)」です。 貴社が自社の現地法人で雇っている従業員を、PEO事業者と”共同の雇用主”として管理し、人事・給与・労務の実務を分担します。もともと米国で発達した仕組みで、貴社がインドに現地法人を持っていることが前提です。雇用主としての責任も、貴社に一部残ります。
EORは「単独雇用」です。 EOR事業者だけが法律上の雇用主となり、貴社は現地法人を持たなくてもインドで人を雇えます。雇用主としての責任も、主に事業者が負います。
つまり、PEOは「すでに現地法人があり、労務をより手厚く支援してほしい」企業向け、EORは「現地法人を作らずに雇いたい」企業向けです。
ただし、ここで大切な注意点があります。インドの法律には、米国のような「共同雇用」を認める制度がありません。 そのため、インドで「PEO」と呼ばれるサービスは、実際にはEORか、または自社で雇っている社員に付随する給与・人事事務の代行を指すのが一般的です。事業者が「PEO」と「EOR」を厳密に区別せず使っているケースも多いため、名称に惑わされず、契約前に「自社の現地法人が必要になるか」「雇用主は誰になるか」の2点を確認して見極めましょう。
「現地法人なしで、インドの人に働いてもらう」という点で、EORと業務委託は代替候補として比べられます。しかし、この2つは”雇用かどうか”という根本が違い、選び方を誤ると大きなリスクになります。
業務委託は「雇用」ではありません。 独立した個人や事業者に、成果物や役務を委託し、その対価を払う形です。雇用契約ではないため社会保険などの義務は発生せず、単発やプロジェクト単位の依頼に向きます。
ただし、インドでは「誤分類」のリスクに注意が必要です。 インドの裁判所や当局は労働者保護に厚く、契約書に「業務委託」と書いてあっても、実態(指揮命令の強さ・専属性・経済的な依存度)を見て「実質は雇用だ」と判断することがあります。誤分類とみなされると、社会保険(EPF=被用者積立基金・ESI=被用者州保険)の遡及負担や罰則に加え、税務上の課税拠点(PE=恒久的施設)とみなされるリスクも生じます。適法にコントラクターを活用するための管理サービス(AOR=Agent of Record)もありますが、継続的に自社の指揮下で働いてもらうのであれば、初めから「雇用」として扱うのが安全です。
EORは、この「雇用」を現地法人なしで実現する手段です。 特定の人材に、自社の一員として継続的・恒常的に働いてもらいたいなら、業務委託よりEORが適しています。判断の目安は、独立した専門家に成果ベースで単発依頼するなら業務委託、自社の指揮下で継続的に働いてもらうならEOR(=雇用)です。
上記の4つ以外にも、EORと混同されやすいサービスがあります。混乱しないよう、簡単に整理しておきます。
ざっくり言えば、人を雇うのがEOR、採用を手伝うのが人材紹介・RPO、業務そのものを任せるのがBPO、という住み分けです。

ここまでの整理をもとに、自社に合うサービスの見つけ方を、簡単な流れにまとめます。まず、次の2つの質問に答えてみてください。
迷ったときは、「①現地法人があるか ②どのように人を確保したいのか」の2点に立ち返れば、選択肢はぐっと絞れます。判断に迷う場合は、弊社INDIGITALでも状況に応じた最適な形をご提案しますので、お気軽にご相談ください。
A. 似ていますが、別物です。PEOは米国発の「共同雇用」の仕組みで、貴社がインドに現地法人を持っていることが前提です。ただしインドには共同雇用を認める法制度がないため、インドで「PEO」と名乗るサービスは、実際にはEORか、現地法人を持つ企業向けの給与・人事事務の代行であることがほとんどです。 事業者によって呼び方が曖昧なこともあるので、契約前に「自社の法人が必要か」「雇用主は誰か」を確認しましょう。
A. どちらも事業者が雇用主になりますが、派遣は「事業者が抱える人材を必要な期間だけ借りる」形で、一時的・変動的な人員に向きます。EORは「自社が選んだ特定の人材を、自社の一員として長く雇う」形です。EORで雇用していた人員を、現地法人設立後に自社に転籍させることも可能です。
A. 短期・単発の専門業務には有効ですが、継続的に自社の指揮下で働いてもらうと、インドでは「実質は雇用」と判断される誤分類のリスクがあります。社会保険の遡及やPE課税につながることもあるため、継続・専属なら雇用(EOR)のほうが安全です。
A. できますが、雇用主は貴社自身なので、すでにインドに現地法人があることが前提です。まだ法人がない場合は、給与計算代行ではなくEORが選択肢になります。
A. サービスごとに目的が違うため、単純な価格比較はできません。「人を雇いたいのか、業務を任せたいのか」「現地法人があるか」で最適な形が変わります。まず目的を決め、それに合うサービスの中で費用を比べるのが正しい順序です。
EOR・給与計算代行・派遣・PEO・業務委託は、どれも「外部の力でインドの人材を活用する」手段ですが、性格はまったく異なります。見分けの軸は、次の2つに集約されます。
中でもEORは、現地法人を作らずに「雇用主の役割そのもの」を任せられる点で、他のサービスと一線を画します。まず「人を雇いたいのか、業務を任せたいのか」という目的をはっきりさせれば、選ぶべきサービスは自ずと見えてきます。
弊社INDIGITALでは、EORによるインド人材の雇用から、現地法人の設立、採用・労務・税務のコンプライアンス対応まで、インド進出の全フェーズをご支援しています。「自社の状況ではどのサービスが最適か」といったご相談も承ります。ぜひお気軽にお問い合わせください。
※出典の格について:労働法典の施行(インド政府)、PF・ESI(EPFO・ESIC)は公的機関に基づく事実です。PEOとEORの区別、業務委託の誤分類リスク、各サービスの担う範囲などは、専門機関・業界一般の理解に基づく整理で、事業者や契約内容によって実態は異なります。GST(人材供給サービス18%)等の税制は適用の要否・税率が変わりうるため、実務では最新の情報と専門家の確認をおすすめします