TOPICS

トピックス

インド人エンジニアのマネジメント課題:指示待ち・納期遅延をなくす3つの対策

2025.10.08 / COLUMN

インド人エンジニアのマネジメント課題:指示待ち・納期遅延をなくす3つの対策

インドは優秀なエンジニアを輩出するIT大国であり、特に、オフショア開発やGCC(グローバル・ケーパビリティ・センター)において、その存在は不可欠です。そんなインド人エンジニアの技術力を活かすことは、日本企業がグローバルな競争力を高める大きな機会となります。

※インドにおけるオフショア開発とGCCの実情については「インドのオフショア開発とGCC: 成功の鍵と未来展望」の記事もご覧ください。

しかし、いざインド人エンジニアと仕事を始めると、「指示待ちに見える」「意図が上手く伝わらない」「納期や品質に対する認識が異なる」といった、マネジメント上の課題に直面する日本のリーダー層は少なくありません。本記事では、インド人エンジニアのマネジメントに悩むリーダー層に向け、日本企業が陥りやすい代表的な課題と、その背景にある文化的な違いに注目し、彼らのポテンシャルを最大限に引き出し、生産性の高いチーム作りを実現するための実践的なヒントをご紹介します。

インド人エンジニアのマネジメントで陥りやすい3つの課題

ここでは、特にエンジニアチームの生産性に直結する、3つの代表的なマネジメントの課題と、その解決に必要な文化の違いを解説します。

①指示しないと動かない?自主性を引き出す指示待ち対策

インド人エンジニアと仕事をはじめると、「こちらから指示を出せば対応してくれるが、それ以上の主体的な提案や行動がない」といった悩みを抱えることがあります。イレギュラーな事態が発生した際に、「どうすればよいか」と指示を仰いでくる姿勢は、日本のマネージャーにとっては「指示待ち」に見えがちです。

  • 背景にある文化的な違い】

  • 階層意識が強く、指示を仰ぐ文化
    インドでは階層意識が強く、部下が上司の指示を仰ぐことが基本的な働き方です。自ら判断して動くことが「権限を越えた行為」と捉えられることもあり、特に上司の意向を無視するような行動は避ける傾向があります。

  • 「背景を察する」よりも「明確な指示」を重視
    インドでは明確な指示がないと動きにくいと考える傾向にあります。そのため、日本的な「空気を読む」アプローチでは意図が伝わらず、結果として受け身の姿勢に見えてしまうことがあります。
  • 【自主性・主体性を引き出すための解決策

  • 目的やゴールを明確に伝える
    「この作業をやってほしい」だけではなく、「この機能の目的は〇〇だ」と伝えることで、相手が自ら裁量をもって動きやすくなります。

  • 裁量の範囲を明示する
    「この範囲なら自由に判断してよい」と伝えることで、判断に迷う状況を減らし、リーダーシップを発揮できる機会を与えることができます。

  • 考えさせる質問を日常的に投げかける
    「どう思う?」「この場合、どんな対応が必要?」といった質問をすることで、主体的に考える習慣を促すことができます。

②「できる」を鵜呑みにできない!アウトプットの質を高めるには?

タスクを依頼した際、「できます(Yes)」と返ってきたにも関わらず、後から確認するとアウトプットの品質が期待と異なっていたり、期日直前で問題が発覚したりすることがあります。なぜ「できる」といったのにできないのか?という疑問は、インド人マネジメントの最大の障壁の一つです。

  • 背景にある文化的な違い

  • 「No」を避けるコミュニケーション
    インドでは、「できません」と率直に伝えることが、クライアントや上司との関係性を損ねるリスクがあると考えられています。そのため、可能性がゼロでない限り、ひとまず「Yes」と答えるインド人が多くみられます。

  • 途中で問題が発覚しても、報告をためらう心理
    タスクを引き受けた後に想定外の問題が生じても、「報告すると責任を問われるのでは」と考え、ギリギリまで問題を伝えないことがあります。
  • 納期と品質の確実性を高める解決策

  • 「Yes」と言われたら、理解度を確認する
    「次のステップは何だと思う?」など、具体的に説明してもらうことで、本当に理解しているかを確認できます。

  • 「イエス・バット(Yes, but)」を歓迎する文化を作る
    「できますが、〇〇のリスクがあります」とリスクとセットで報告する習慣を促すことも一つの方法です。

  • 口頭だけでなく書面でも確認する
    仕様やスケジュールをドキュメント等で共有し、認識の齟齬を防ぐことも重要です。文書化しておくことで、途中で問題が発生した場合でも、どの時点で認識がずれていたのかを明確にできます。
インド人エンジニアとの開発プロジェクトにおける進捗管理

③納期直前まで「No problem」納期遅延をなくす対策

進捗を確認すると「No problem」と返ってきたので任せていたところ、納期直前になって「やはり間に合わない」と報告を受け、急遽対応に追われる経験は、日本人マネージャーにとって大きなストレスです。これは、「納期」と「進捗管理」に対する認識の違いから生じます。

  • 【背景にある文化的な違い

  • 時間管理の考え方の違い
    インドでは、予定通り進めることよりも、想定外のトラブルに柔軟に対応することが重視される傾向があります。そのため、日本のような厳密なスケジュール管理が根付いていない場合もあります。

  • 突発的な事象による遅延が発生しやすい
    インドでは政府の突然の祝日変更や停電・洪水・交通渋滞など、業務進行に影響を与える要因が多くあります。そのため、日本では想定できない理由で遅延が発生することも珍しくありません。

  • 「No problem」は「問題なし」ではなく「今は問題なし」
    インド人エンジニアが言う「No problem」は、「最終的に問題なく終わる」保証ではなく、「今のところは問題はない」という暫定的な状況報告として使われることがあります。
  • 【確実な進捗管理とチーム作りのコツ】

  • マイルストーンを細かく設定する
    週単位、場合によっては日単位で進捗報告をしてもらうことで、大幅な遅延を未然に防ぐことができます。

  • 「間に合うか?」ではなく「今どこまで進んでいるか?」と聞く
    「納期に間に合いそうか?」と聞くと「No problem」と返ってくることが多いため、「現在の進捗はどの段階か?」と具体的に確認することが重要です。

  • 想定通りに進まないことを前提とする
    日本の進め方をそのまま適用するのではなく、インドの業務スタイルを踏まえたうえで、柔軟な対応ができる体制を構築しておくことも必要です。

文化理解はインド人マネジメント成功の絶対条件

インド人エンジニアと仕事を成功させる鍵は、彼らの文化的な背景と、それに基づく仕事のスタイルを理解し、日本のやり方を一方的に押し付けないことです。「なぜ動かないのか」「なぜ嘘をつくのか」といった疑問は、彼らの規範を理解することで解消されます。

インド人マネジメントやチームビルディングにおいて、文化的な違いを障害と捉えるのではなく、それを乗り越えることで生まれる「日印チームのシナジー」こそが、企業の競争力を高める源泉となります。

本記事で紹介した対策は一例に過ぎません。実際の現場では、それぞれのチームの特性や状況に応じて柔軟に調整しながら、最適な方法を見つけていくことが大切です。

当社では、インド現地法人の組織開発と人材マネジメントに特化したトレーニングを提供しています。インド人エンジニアのマネジメント、チームの生産性向上にご関心のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

◆関連記事

・インドにおけるオフショア開発と文化的適合性
 https://indigital.co.jp/topics/column/eor_risk_solution/
・越境テレワークを通じてインドIT人材の受け入れがスムーズに。
 https://indigital.co.jp/topics/column/interview-01/
・インド進出企業向け異文化研修を提供開始
 https://indigital.co.jp/topics/release/2025-08-new-service-ja/

EN